2021_NYM
【NYM】戦力分析=極端に言えば占星術 2022/04/03

毎年思いますが,Metsの戦力分析はあてになりません.せいぜい地震予報のようなものでしょうか(さすがに占星術は言い過ぎか).このNoteが数日前に書かれていれば,そこにはJ. deGromM. Scherzerに対する礼賛が綴られ,勝利への希望が満ち満ちていたでしょう.deGromについては肩甲骨の異常による一月以上の離脱が報じられ,Scherzerはシーズン前の最終登板をスキップ.不穏なニュースがファンダムに溢れると,「ああ,今年も開幕か」と(それでも快進撃への期待は忘れず)4あるいは5ヶ月ぶりの胃へのストレスに備えるのです.

2大看板エースの凶報を背景として,Metsフロントは先発投手を得ようと動き始めています.この記事を書きながら筆者が繰り返し調べているのは,MetsとPadresの間で交わされているというトレード談です.Dom Smithを見返りに,Eric Hosmer, Chris Paddack, さらにEmilio Paganを得ようという話が持ち上がっているようです.年俸の大半を負担してでもHosmerを放出したいPadresと,投手を補強したいMetsの希望が一致しているということでしょうか.また,NLでもDH制の採用が決まったことで,P. Alonsoのいるファーストに,ポジションが被る選手を獲得する障壁が下がったという背景もあるでしょう.

このトレードについては詳細が決まり次第改めてお伝えするとして,今回はMetsの今年のポイントを簡単にまとめてみたいと思います.

野手新戦力は期待大...だが4割引で期待せよ

以前の記事でも触れていますが,今オフにMetsはS. Marte, E. Escobar, M. Canhaと3人の大型(中型?)補強を行っています.これらの補強により攻守にわたる野手のアップデートを行っています(走力の衰えが心配なMarteはスプリングトレーニング中すでに2盗塁!すばらしい).主にMarteはセンターとライト,Canhaはレフト(とセンター?),Escobarはセカンドとサードを守る可能性があり,このあたりの布陣はよく読めません.表題の懸念は...もちろん故障による離脱に関することです.筆者は昨年C. Carrascoが早々に離脱したときも何の怒りや嘆きも湧きませんでした;何事も準備が大事.

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ユーティリティプレイヤーの運用が鍵

新戦力3人が多芸な選手であることも後追いして,P. AlonsoF. Lindorを除くMetsの選手はみな複数の守備位置につく可能性があります.とくにD. Smith, L. Guillormeは今年のキープレイヤーであると筆者は見ています.前者は2020年の打撃ができればリーグ屈指の打者でかつDH/LF/1Bを全うでき,後者は守備ではプラスを発揮できます.Guillormeはここ数年打席数は少ないながらも高い出塁率(昨年132打数で.374)を残しており,終盤の粘りも印象的な選手です.J. McNeil(セカンド,サード,レフト,ライト)も実力通りであれば3割が期待できる選手であり,JD. Davisもops.8の実力を持っています.彼らの運用(トレード放出も含める)がMetsの今シーズンを左右する最大のポイントでしょう.新監督B. Showalterの手腕が試されます.

これに加え,P. Alonsoが安定して長打力を発揮できるか(昨年opsは前半.803, 後半.921),F. Lindorが打席での輝きを取り戻すことができるかが主要なポイントです.

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期待の最大値は高い=すなわち例年通り:投手力

オフシーズン最大の衝撃はMax Scherzer - a Met- の誕生でしょう.昨シーズンも15勝を挙げ180イニング弱で236奪三振,WHIPは0.86と自己ベストを更新するという堂々たる成績&安定感を誇る球界のエースの獲得は,それだけで「優勝」の二文字をファンに想起させるのに十分です.一方,昨年も離脱があったように,健康状態に全く不安がないわけではありません.

Chris Bassittの補強は今オフシーズン中盤の最大ニュースでした.昨年防御率3.15で12勝し,Athleticsに8つの貯金をもたらした投手がローテーションに加わることで,弱点であった先発陣の大幅なアップデートとなりました.これに加え,C. Carrascoの復調,2020年6勝のD. Petersonのv字成長,昨年飛躍(6月は5先発で防御率1.04)したTylor Megillが安定感を発揮すると言った,様々なポジティブシナリオが存在します.一方で,これら全てが実らず,新戦力が故障という最悪のシナリオも現実感があるため,全く結果が予測できません.

まとめ

以上を一言でまとめると,「様々な勝ち筋が存在している;そして負け筋も」です.こうなると,監督の采配,フロントによるロースター構成,さらに故障などの不確実性の管理がシーズン成績を左右する最っっっとも重大な要因となることが明らかです.ここで願いたいのは,オーナーSteve Cohen以下,一貫して行われてきた期待値ベースの投資・編成戦略(例:安く買えるし当たればでかい→有名選手のバウンスバックに賭ける)にアレンジを加え,期待値を落としてでも不確実性を下げるような形での投資を行うことです.

あとは,ファンの皆様自身で神や超自然的存在・現象に対して祈り,幸運を待ちましょう(車が三回転するような大事故に巻き込まれたP. Alonsoが無事であって,本当に良かった).



【NYM】落ち着かない好調 2022/05/14

2022シーズンのMetsは好調な滑り出しを見せています。開幕33試合を22勝11敗の好成績で終え、NL東2位のBravesと6.5ゲーム差をつけ首位につけています。昨年まで隙だらけのMetsとは異なり、相手のミスに付け込んで逆転勝ちを収めたり、中盤に中押し点を挙げて逃げ切る試合が多いように感じます。先日Phillies相手に収めた大逆転勝利では、9回に7点を入れ逆転を果たしましたが、昨年であればその裏に Rhys Hoskins あたりに逆転HRを打たれていたところでした。

Metsの躍進の裏には、何が隠されているのでしょうか?

先発・中継ぎ双方の整備に成功

もはや(良くも悪くも…)伝説の存在と化しつつある J. deGrom 不在ながらMLB最多の17勝を挙げている先発投手陣のみならず、中継ぎ陣も安定しています。先発防御率3.30でMLB6位、中継ぎ防御率3.27で8位はもちろん好成績ですが、合算で3.29で全米4位と順位を上げるということは、両者のバランスが取れているということです。

多い三振少ない四球、此れ投球の基本なり

先ごろ打ち込まれてしまいましたが、これまで開幕投手としての好投から一貫してローテーションを引っ張ってきた Tylor Megill の成長の影響は大きいでしょう。94.6→95.6mphと平均球速を伸ばし、時折100mphに届こうかという直球は、昨年よりもハードヒットを浴びる割合が15%も減っています

https://twitter.com/PitchingNinja/status/1521926156878249984?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1521926156878249984%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.cbssports.com%2Fmlb%2Fnews%2Fthree-mlb-pitchers-including-mets-tylor-megill-who-are-off-to-surprisingly-strong-starts-in-2022%2F

Megillの強みは高い奪三振能力と四死球の少なさ (K/BB: 3.77) ですが、この特徴は、新加入のM. ScherzerC. Bassitが、復活のC. CarrascoT. Walkerが次々とアウトを積み上げる今年のMets投手陣を特徴づけるものでもあります。チームK/BBが3.59はMLBトップの数字を誇っています。それを象徴するもう一人は、これまで無失点投球を続ける覚醒したリリーバーDrew Smith(被打率 .093、奪三振率11.48)でしょう(もちろんEdwin Diazも忘れてはいけない)。

横軸が与四球数、縦軸が奪三振数

多投連投鮮し仁

また、中継ぎ投手に目を向けると、運用の工夫が見て取れます。

横軸は連投数/中継ぎ登板数、縦軸が回跨ぎ数/中継ぎ登板数
色で1試合当たりの中継ぎ登板数を表している。
データソース

回跨ぎと連投、さらに1試合当たりの中継ぎ登板数を見ると、Metsは中継ぎの登板数を少なくし、連投を抑えて多めに回跨ぎをさせる戦略をとっていることがわかります。運用が功を奏してか、SmithとDiazのみならず、開幕不調気味であったSeth LugoJoely Rodoriguezが安定感を得つつあり、とっておきの左腕Chasen Shreveが支配的な投球を続けていることはさらなる好材料です。
2018年、Metsは開幕11試合で貯金10を作りつつも最終的には借金を作りPOを逃すという苦い経験をしています。このときは、連勝中の中継ぎ酷使が失速の原因の一つとなっていました。経験豊富な B. Showalter の采配により、当時監督1年目の M. Callaway の轍を踏まずに済むかもしれません。

打低の風潮が追い風

2022年シーズンは、近年1の打低シーズンであるといわれています。リーグ長打率は過去5年の平均.426を大きく下回り.373です。実は、今年のMetsの戦略はこの理由は不明な風潮とマッチしています。Statcastによると、MetsはMLB平均より1.5mph近く遅い平均打球速度、ハードヒット率も平均より5%近く低い。一方で打率の予測値は高く、実際にMLB平均より2分高い打率.254はMLB第3位に付けています(出塁率.334はトップ!)

横軸がチーム出塁率、縦軸がチーム長打率

この図からも、三振を抑え四球とヒットで出塁に特化した打撃スタイルが見てとれます。この戦略の申し子といえるのが復活を遂げたバットマン、Jeff McNeilでしょう。開幕シリーズでの固め打ち以来、打率三割をキープしています。最も多く守備でアウトを増やしてもいるMcNeilに加え、Mark Canhaハードヒット率下位7%で打率3割)といま最も隙がない選手であるBrandon Nimmoが攻守ともに活躍(CanhaとNimmoは共に守備指標Outs Above Averageがプラス)し、唯一の大砲であるPete Alonsoが貴重な一撃を加える存在として鎮座しています。

Savantより
驚きの赤さ

このように、チームの戦略・編成とリーグの傾向が合致したことは今シーズンの好調の要因である可能性があります。長打率が一様に低く一発の出なさが不利に作用しないのであれば、出塁を重視した編成はプラスに働くはずです。

まとめ

Metsの好調は、けっしてまぐれではないものでした。しかしこれらのアドバンテージは、リーグの状況やチームの状態が変化することによって揺らぎうるものです(怪我人が出ないように、君は十分に祈ったか?)。チームの真価が問われるのはこれからでしょう。



【NYM】速報:Mets開幕 2022/05/22

旧約聖書に『ヨブ記』という書物があります。神に信仰心を試され、何も悪いことをしていないのにも関わらず、様々な苦難(神の裁き)を受ける男性の話です。
New York Mets のファンであれば、というか野球ファンであれば誰しも、この伝説について知ることにより、自らに与えられた苦痛(例: 大エースの故障)と向き合った先達がいることに気付けるでしょう。

Another year, another mess

現地 5/13 に Citi Fieldで開催された Mariners には、Japan Heritage Night という名前が付けられていました。この試合で予定されていた在ニューヨーク日本国領事館の森美樹夫総領事の始球式が無視されるという事件が起きました。Mets ファンであればこのような野球の試合と無関係なトラブルには耐性があると思いますが、今回は国際交流を祝福する場であり、その主賓を辱めたとあって笑いごとで済む話ではなくなっています。

謝罪のプレスリリース

誰も言い出せない雰囲気を作った段取りのまずさ、公式謝罪の遅さ、無視の実行犯 Scherzer のノーコメントと、球団として問題を軽視する姿勢が垣間見えます。筆者のような日本のファンは(たとえ差別的意図がなかったとしても)一層複雑な思いを抱くことになります。選手が犯罪行為や差別発言を行った、などでファンが素直に応援できず苦しい思いをすることは時々起きていますが、それが球団となると、いやはや…

損傷拡大:先発ローテーション

開幕からの好投から一転し、5/11のNats戦で打ち込まれた後に上腕の故障が判明した Tylor Megill 。彼に続き Max Scherzer が斜腹筋の故障で離脱しました。この故障は復帰に 6-8 週間を要するものと見込まれています。これで、当初の見込み通り開幕1月少々でMLB最強の2枚看板 deGrom と Scherzer が離脱したことになります。

前段の不祥事を含め、ようやく Mets の2022シーズンが本格的に開幕したといえるのではないでしょうか?

ところで、斜腹筋の損傷 (oblique strain) は大スター David Wright を苦しめ引退に追い込んだ原因の1つでした。この故障はこれまで非常に頑丈であった Scherzer のキャリアにダメージを与えるかもしれません。

さしあたっての代役は Trevor Williams になっていますが、AAA降格後11イニング無失点を続けていた David Peterson もチームに合流しました。

実は見るべきところのあるWilliamsのStatcast;Barrelと四球の少なさが特に光る。

https://www.youtube.com/watch?v=b9IB22bAn6I

それでも暗くはない2022シーズン

冒頭に「神の裁き」について書きましたが、実のところ今年のシーズンはまだまだそう言えるほどの苦難をもたらしているとは言えません。むしろ、鬱憤を振り払う Pete Alonso の大ホームランによるサヨナラ勝ちをはじめ、Jeff McNeil や Brandon Nimmo、Mark Cannha などの中軸の好調による気持ちの良い勝利を積み重ねています。

https://twitter.com/SNYtv/status/1527392260261826561

裁きか恵みか―――賽は投げられたるべし。もとより、ファンにできることは、一度決めたチームの応援を粛々と続けることくらいなのです。



【NYM】Fall and (prospective) rise of Mets Realm 2022/12/21

Mets担当の磁場ミャです。
前回の更新から随分と間が空いてしまいました。

今更ながら振り返ってみると、2022年のMetsは粗方の予想を遥かに上回る101勝を重ね、4月7日から9月30日まで、首位を開けたのはたったの2日と大成功といえる1年を送りました。ゲーム差なしの2位でシーズンを終えたことを除いては。


image retrieved from https://erikberg.com/mlb/charts

WS制覇率の変化をもとに算出される「重要な試合*」でも6割以上の勝率を誇ったMetsは、決して重要な試合に弱かったわけではありませんでした。シーズン終盤に「あと一つ」勝てばよかったところを落としてしまったというだけなのです。
*Championship Leverage Index > 1.2の試合の勝率は.611だった

2022Mets 10試合の得失点移動平均
easy-winが続く期間と厳しい期間が交互に来ているのがわかる。この周期からすると、シーズン最後は「勝利の波」が来るはずだった…

王座を奪うならゲリラ戦じゃだめなんだよ、君

5連覇中のBraves王朝に立ち向かうべく、Metsは今年も活発なオフシーズンを送っています。昨年は野手を中心に新戦力を加え、皆が期待に答えて素晴らしい成績を残しました(S. Marte OPS .814; M. Canha 122OPS+; E. Escobar 9月Metsを支えた月間最優秀選手)。フロントは確かなFA手腕を示したと言えます。打って変わって、今オフの課題は投手陣の補充です。カリスマ的存在であったJ. deGromが早々にRangersと契約 (;_;) し、T. WalkerC. Bassitとも再契約しなかったことに加え、T. MegillD. Petersonが埋めていた枠も「埋めようがある」状態でした。

Cohen体制のMetsは動きが早い。なぜなら、圧倒的財力のおかげで「コスト」と「リターン」の視点で支払い可能な額が決まれば、躊躇をする必要がないからです。非常に機械的な意思決定を行えることになり、方針がブレにくいのです。

したがって、Metsの中長期的戦略は、再建・必勝のサイクルではなく、確率の高い投資を継続することで確かなリターンを積み重ねる方向性になります。具体的には、単年は高くても契約期間が短い中堅-ベテランを毎年補充し、一方で「レンタル移籍」的なトレードを控えてプロスペクトを守る戦略です。打撃成績が安定し (通算OPS.827, OPS+130)、平均以上のセンター守備+両翼をこなせるB. Nimmoを長期契約 (8yr, 162M)で囲ったのも、その方針の現れでしょう。

We found Nimmo!

https://mobile.twitter.com/Mets/status/1601676123611332608

新たな仲間と新たな旅:ペイロール>$400M(暫定)の巨大戦艦

期待が先行した感のあるカリスマdeGromのポジションに老神J. Verlanderを据え(10年ぶりにM. Schserzerとの厨ローテを組む!)、WalkerをJ. Quintanaで代替しつつ左腕でローテにバリエーションを持たせています。そして、Metsファンにとって少し早いクリスマスプレゼントとなったのが千賀滉大です。中4ローテの適応など不確定要素は多いですが、アップサイドはサイ・ヤング級です(5年契約であることを見ると、MLBお墨付きの名将B. Showalterの創造的な起用によって、焦らず適応をサポートすることになるのでしょう)。確実な補強とファンのワクワクを両方実現するなんて、最高ではないですか?

加えて、E. Diazの再契約や(さらっと流すのは本来おかしい大ニュース🎺🎺)、実績十分かつ2022シーズン好調のD. Robertson及びB. Raleyも加え、リリーバーの層も厚くなっています。

https://www.youtube.com/watch?v=9r4JFdRA6io

さて、2022シーズンの悲哀とオフ前半を足早に振り返ってみました。続きの記事では、Metsの将来展望についても纏めてみたいと思います。




【NYM】Organization health watch 2022/12/21

本記事に先立ってお知らせです。定期更新の目処が立たないことから、MLBファン合同NoteのMetsメイン担当は今年限りにさせていただくことにしました(正式な担当変更は後任が決まり次第ですが)。投稿頻度が下がり大変申し訳ありませんでした。最後の記事は、チームの未来に着目してみたいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=S_S5xgA47bk

本来であれば1人1人の有望株について掘り下げた記事にできればいいのですが、自分にはあまり知識がないため、別のアプローチを取ってみたいと思います(1人1人の解説ならば、例えばこの記事が参考になります)。具体的には、プロスペクトランキングの分析によるファーム組織を概観してみます。データソースはこちら、(2022シーズン中の更新データ;N=1295人)を使用します。

プロスペクトランキング分布

投手
縦軸:プロスペクトランキング Fangraphs (2022シーズン中の更新データ) 上ほど上位
横軸:チーム 左ほど平均が上位
野手
縦軸:プロスペクトランキング Fangraphs (2022シーズン中の更新データ) 上ほど上位
横軸:チーム 左ほど平均が上位

プロスペクトランキングの度数分布を並べて見ると、Metsは平均順位ではだいたい真ん中にいることがわかります。野手の方は上位の選手がかなり多い傾向にあります。上位に集中しているCLEや、中位以下の選手が多いATLの分布も面白いですね。地区優勝チームに上位プロスペクトが集まっているのは恐ろしいですね。ほかは概ね左に再建中のチームが集中している様に見えます(なんとなく再建のプロセスを追える)。

ETA(推定昇格時期)

推定昇格時期で見ると、Metsはすぐに昇格できる選手から割と時間のかかる選手まで、バランスの取れた構成になっていますね。特に野手は2つの山があり、若い選手と昇格が近い選手の両方にピークがあります。対して、Yankeesは若い層が不足しているようです。Bravesの野手は長い目で見る選手が多いですね。これが先のグラフの順位の低さに影響しているのでしょう。

リスク

次に、fangraphsが独自に算出している「リスク」の分布を見てみました。堅実に成長すると見られる選手が低リスクで、不確実性の高い選手が高リスクとなります。

縦軸の値が高いほどリスクが高い
(Highを1,Medを0,Lowを-1としたときのチーム平均リスク値)
オレンジが野手、青が投手

Metsは、投打問わずファームにハイリスクの選手が多くなっています。「リスク」は主観が入ったデータのため、解釈が難しいところではありますが、Cardinalsは低リスクの投手を好む、と言われると「たしかにそんな気がする」と思えるグラフですね(対して野手は高リスク選手が多いのも面白い)。若い選手がとりわけ多いわけではないMetsが「ハイリスク」判定を得ているので、博打的な選手を獲得しがち、だと言えそうです。ファーム組織の入れ替わりには時間がかかるため、オーナーが変わったことでどのような変化が現れてくるのか気になるところですね。

↓は「リスク」の説明。

This column is titled “Risk” because “Variance” is too long to put in a column header, but that’s what it means. The column can say “Low,” “Medium” or “High.” For younger prospects, variance is the distance between what I believe their ceiling and floor to be. So high-variance prospects are boom-or-bust types and lottery tickets, while low-variance prospects have a narrower band of perceived possible outcomes. As players move to the upper levels of the minors, I look to adjust variance down since the physical development that makes younger prospects have higher variance has typically occurred. Older/upper-level prospects with high variance are ones who I think may have volatile year-to-year performance, like a Carlos Gómez or Javier Báez type of player. These are often hitters with some exploitable trait, like a bad approach or a hole in their swing.

https://blogs.fangraphs.com/how-to-use-the-board-a-tutorial/

おわりに

いかがでしょうか?こういう視点でプロスペクトランキングを見るとはあまりない気がします。特にリスクに関するチーム間の際は興味深いですね。

ご挨拶

Note企画で書かせていただいた記事は、個々の試合や選手に着目するというよりは、チーム全体の傾向やリーグ内での相対的ポジションに焦点を当てたものが多かったと思います。好みはあると思いますが、「セイバーメトリクスともまた違う」野球データの楽しみ方を伝える一例になっていれば嬉しいです。皆様、これまでありがとうございました。引き続き、ときどき投稿はする予定です(Mets担当のバックアップ要員?このあたりは決まり次第再掲します)。