2021_NYM
【NYM】シーズン開幕!3つの見どころ紹介 2021/04/06

 こんにちは、磁場ミャです。MLBファンの皆様の多くが週末の開幕カードで盛り上がる中、置いていかれたような感覚がありましたが、それも今日までです(Nationalsファンの皆様お先です)。ついに明日は我らがMetsの開幕戦です!!

 本来ならば開幕ロースターやオーダーの紹介を入れたかったところですが、引き継ぎを頼まれたタイミングが開幕直前だったこともあり時間が取れませんでした。選手紹介については今週末にお届けする予定です。

 そこで本投稿の内容ですが、Metsの開幕戦を見ながら、あるいはハイライトを確認しながら読める「開幕戦の見どころ」をまとめた内容にしたいと思います。選手紹介や昨年の成績はbaseball referenceで調べればわかる!、ということでまたしてもややマニアックな内容にしました。具体的には、①J. deGromのカーブ②B. Nimmoの守備位置③D. Smithの睡眠という三本立てをお送りします。

①Jacob deGromのカーブ

 Jacob deGromといえば紛うことなき現役最強投手。過去3年の成績では、防御率2.10(1位)、FIP2.31(1位)、奪三振628(3位)と圧倒的な成績を残しています。スプリングトレーニングでも防御率0.66と状態は万全でしょう。恐ろしいのは、2016年以降毎年球速が上がっていること(下図)。10年後は120mphを投げていることでしょう。

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 次に、それぞれの投球割合を見てみましょう。deGromは上図に示した通り4シーム、スライダー、チェンジアップ、カーブ(2シームは2019年途中から投げなくなった)を持ち球としています。下図に投球割合の年別推移を示しました。見ると、デビュー当初は4シームが半分程度で、残りは他を満遍なく投げていましたが、ここ数年はそれぞれの投球割合が固定化しつつあります(最適化されているということでしょう)。4シームを半分程度、スライダーを3球に1回、チェンジアップを5球に1回、カーブは1イニングに一球投げるかどうか、といったところです。

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 ところで、実は昨年末はカーブの投球割合が低下していました(過去にもシーズン終盤はカーブの割合が低下する傾向がある)。Cy Youngレースでの焦りのようなものもあったのかもしれません。その結果、昨年末の数試合はやや余裕がない投球になっていました。このようなデータは選手や首脳陣はもちろん把握しているはずです。万全の状態で迎える開幕戦では、カーブで意表を突くケースが再び見られるか、はたまた他の球種の精度を上げてねじ伏せる投球になるのか。ぜひ開幕戦はdeGromの「カーブ」に注目して見ていただきたいです。

②Brandon Nimmoの守備位置

 2021年のMetsはBrandon Nimmoを中堅手として開幕します〈2021/04/06 7:55 追記: 開幕ラインナップでは左翼手として出場。話が違うやん!まあ、以下は守備位置を変えても通じるはずなので読み替えてください〉。Nimmoは高い出塁能力(通算 OBP.390)を持つ選手で、パワー(2020年 SLG.484)も走力(MLB平均より1ft/s速い28ft/s)もあり非常に強力なオフェンス能力を持っています。

 一方で外野手として、防いだ点数を表すDRSでは-5と、守備に問題があることが指摘されています。そんなNimmoの守備に今年は変化があるようです。下の写真を見てください。

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 これは3月27日の試合でセンターのNimmoへとフライが上がったシーンのスクリーンショットです(リンクより取得)。非常に深い位置に守っているのがわかります。どうやらこれが今シーズンのNimmoの守備位置になるようです。詳しくはこの記事(外部リンク)を見ていただきたいのですが、要は守備位置より前の飛球は得意で後ろの飛球は苦手だというデータを見て、定位置を後ろにずらしたのです。

 このような変化は、データを駆使した新たなMetsの戦い方を予感させるものです。ただし、深い位置に守ることによってヒットゾーンが広がるのも事実。試合を重ねるごとにこの作戦の成否が明らかになるでしょう。ぜひ、開幕戦はBrandon Nimmoの守備位置にご注目ください

③D. Smithの睡眠

 2020年のDominic Smithのシーズンは素晴らしいものでした。キャリアハイの打率.316、OPSは.993とリーグ屈指の打撃成績を残しました。Smithの打撃成績の向上は2019年シーズンから見られています。この成功の背後にあるのは、実は睡眠習慣の向上だというのです。もともと彼は睡眠時無呼吸症候群に悩まされており、打席での集中力に問題がありました。彼はこの問題を解決するために専門のコーチと協力し、Continuous positive airway pressure device(下図)というデバイスを用いるようになりました。

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 そして最強の睡眠を手に入れた彼は、最強の打者へと成長したのでした(雑)。ともかく、選手の健康管理がここまで成績に影響を及ぼすというのは、コーチング面でも非常に重要な知見であると思います。

 ぜひ開幕戦は、Dominic Smithが前日にどれだけよく眠れたかを想像しながらご覧になってください

まとめ

 以上、ややマニアックな話が多くなってしまいましたが、開幕戦の見どころをお送りしました!私はこれから寝て、明日に備えたいと思います。Let's go Mets!🍎



【NYM】延期に支えられた(?)好調 2021/04/18

 こんにちは。すでに今季2度目となるダブルヘッダーの第2戦を観戦しながら書いています。開幕から計7試合もCOVID-19や雨・雪など様々な理由で延期になっており、なかなかスケジュール通りに試合が消化できないMets。延期の試合はどれもdeGromが先発予定となっていたため、彼の投球を恐れた各チームが様々な力を使ってdeGromから逃げ回っているというようなジョークがSNSに投稿されていました。

 今日がダブルヘッダーになった原因は昨日コロラドに降り積もった雪でした(本記事のヘッダー画像参照:出典)。なんと本日も最低気温は摂氏零度を下回るそうで、そんな気温でも雪が片付いたら平気で試合をするというアメリカ的な執念を感じます。

 さて、Metsは現在地区首位です。高々十数試合でどうこう言うのも騒がしいですが、やはり嬉しいもの。好調の理由は? 簡単な戦力分析も交えつつ紹介していきます。

ポジティブ要素①:先発ローテーション

 現在MLB6位のチーム防御率(3.12; DH2戦目開始時点では2.55で2位だった)を支えているのは先発陣の頑張りでしょう。ついに4シームとスライダー以外を投げる必要がなくなったJacob deGrom(今日は勝ち星が付いた!)、1シーズンの休息を経た最強のグラウンドボーラー兼意識高い系ツイッタラー(私見)Marcus Stromanを筆頭に、キャリア序盤レベルの球速(95mph)を取り戻したTaijuan Walker、ルーキーイヤーにスライダーを軸に高い奪三振能力を示したDavid Petersonと続きます。ここまで10試合中7試合で先発陣がQuality Start(6回以上を投げ自責3失点以下)を示しており、非常に好調です。本日は谷間の先発であるJoey Lucchesiが打たれてしまいましたが、このスポットに試合形式の練習で4イニングを投げ復帰間近なCarlos Carrascoが入ることでさらに強力なローテーションとなるでしょう。

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 不安要素としては、試合延期の影響でのスライド登板が重なったことが今後のコンディションに影響しないかという点があります。谷間の先発を務める投手には不安があるため、ローテーションにほころびが生じるとチームの調子が大きく崩れてしまう可能性があります。

ポジティブ要素②:出塁能力

 現在のナ・リーグ首位打者は誰でしょうか? 四死球でも全力疾走を欠かさない我らがBrandon Nimmoです。驚異の出塁率.571を誇るNimmoを筆頭に、チーム全体でも出塁率がMLBでもDodgersに次ぐ2位の.347と、相手守備に絶えずプレッシャーを掛けることができています。今月始めに10年総額300億円以上の契約を結んだ新加入のFrancisco Lindorは打率こそ.212と振るわないものの、出塁率は.371と高水準です。

 攻撃面での不安要素は長打力が発揮できていないことでしょうか。チーム長打率はMLB26位の.363と沈んでいます。デビュー以来チームの顔を務め、今オフのFA前の契約延長がホットトピックとなっているMichael ConfortoがOPS.509、チーム屈指の巧打者であるJeff McNeilもOPS.565と振るいません。2019シーズンに新人の本塁打記録を更新したPolar BearことPete Alonsoは本日の第1戦に目のさめるような弾丸HRを放ちましたが、打率.222でOPSも.737と、少し寂しい成績。もちろん、彼らの実績を考えると、今後の揺り戻しがあると期待してよいでしょう。先発陣が崩れだしたときに、今度は逆に彼らの打棒でチームを支えてもらいたいです。

ネガティブ要素:中継ぎ陣

 ここ数年のウィークポイントであるブルペン。今季は、Edwin DiazJeurys Familiaというおなじみの投手に加え、昨年トレードで獲得した100mphリリーバーのMiguel Castro、新加入のTrevor May、同じく新加入で昨年WS進出のRaysブルペンを支えた一人であるAaron LoupKing Cobraの愛称を持つJacob Barnesという比較的新しい顔が多くなっています。しかし、チームの全自責点28点のうちの13点が中継ぎ投手による失点(防御率は5.24)という、苦しい成績となっています。特に被打率が全体的に高く、不穏な数値です。

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 上がり目としては、Seth Lugoの復帰が挙げられます。中継ぎとしてはここ数年かなり安定した成績を残しており(2018年:54試合 EAR2.66 WHIP1.13 103SO、2019年:61試合 ERA2.70 WHIP0.90 104SO、2020年:9試合 ERA2.61 WHIP0.97 11SO)彼が戻ればLoup(May/Castro)-Lugo-Diazという勝ちパターンが形成できるでしょう。

まとめ

 これまでMetsがある程度戦えている理由の一つは、度重なる延期のおかげで7イニング制であるダブルヘッダーの試合が増えていることが挙げられます。高い出塁率を生かして効率よく得点して試合を優位に運びつつ、先発陣が長いイニングを投げることで、中継ぎ陣が投げる機会を減らすことができています(実際、ダブルヘッダーでは4戦3勝)。今度、気候やCOVID-19関係の情勢が落ち着き通常通り9イニング制の試合が増えると、このような戦い方はできなくなってきます。そうなった後も勝ちを重ねられるかは、どれだけ中継ぎ陣が踏ん張れるか、また高い出塁能力に長打を加えてビッグイニングに繋げられるか、という点にかかっているでしょう。

 次回は今回あまり触れなかった守備についての分析や、番外編として今シーズン活躍している元Mets戦士の紹介といった内容を考えています。ではまた!



【NYM】我慢の時 2021/05/01

 こんにちは。僅差で競り負ける試合が続いているので滅入ってしまっています…。ヘッダー画像はこの本の表紙から持ってきました。

 Metsは過去10試合で3勝7敗と負け越し、貯金をすべて吐き出して地区4位まで転げ落ちました。しかも、7敗のうち4敗が1点差での負けと、非常にストレスの貯まる(直球)試合を繰り返しています。タイトルの通り、現在は我慢の時だと思いますが、何をどう我慢すればいいのかを具体的に数値を挙げて見ていきたいと思います。

 ところで、昨今Jacob deGromの登板試合に援護がない/守備のミスが目立つなどと言われていますね。2018年以降60試合以上先発した投手の防御率と勝率の関係は下図のようになってます(選手名の色は勝数に対応)。deGromはたしかに全体の傾向からすると外れ値です。逆に上振れしているのはEduardo Rodriguezでした。ただ、彼がどうこうではなく、Metsにはもっと根本的な問題があると筆者は思っています(それが今回のテーマです)。

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 MLB屈指の投手陣(ERA 2.90でMLB2位)を誇るのになぜ勝てないのか! Metsが抱える闇へとご招待いたします。以下で紹介する数値はすべて2021年シーズンのものです。

①長打力の低さ

 前回の記事でも指摘しましたが、Metsは長打力不足が問題です。データを見てみると、長打力を表す指標であるIsoP(長打率-打率)において、最下位を突っ走っております(下図)。横軸が[打率]・縦軸が[長打率-打率]を表しています(文字色はチームOPSに対応)。Metsがどこにあるかって?印をつけなくてもわかりますね。Bravesすげ〜

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この原因としては、主力が軒並み長打を欠いてしまっているのが原因でしょう。打球速度や角度から予測される長打力 (xSLG) において、D. Smith (上位83パーセンタイル/100)とJ. McNeil (67/100) には上がり目がありますが、M. Conforto (50/100)や、特にF. Lindor (16/100) は単なる不運ではないアプローチの問題が見て取れます。

②得点圏での弱さ

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横軸が[打率]・縦軸が[得点圏打率]を表しています(文字色は一試合あたりの打点に対応)。Metsがどこにあるかって? 印をつけなくても(以下略)。貧打にあえぐTigersは打率に比べたら頑張ってる方なんですね。

 いかがでしょう? 闇がだんだん深まってきましたね。

③エラーによる失点

  以下の図は横軸が[失点を試合数で割ったもの(一試合あたりの失点)]・縦軸が[失点-自責点を試合数で割ったもの(一試合あたりの非自責失点)]を表しています(文字色はチーム勝率に対応)。Metsがどこにあるかって? 印をつけなくても(以下略)。

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上図の示すことは、New York Metsという名前のチームが一試合あたりに1点近く自責がつかない失点をしているということです。要はエラーによる失点がMLB中最悪の頻度ということです。チーム守備率は.981と低いですがMLB26位と下がまだあります(それでも悪い数値だけど)。

 ただ、失点率で見ても30チーム中の2位ですし、たくさん点を取られているわけではありません。しかしエラーによる失点を引きずって嫌な負け方をする試合が多いような気がします(例えば、今日の試合)。

まとめ

 こうも不穏なデータが揃うと、なにか背後には重大な問題があるような気がしてきませんか? deGromの援護が無いどうとかではなく、単純に得点が絡む場面に弱いのです。ネタにしやすい事例が言い訳になって、チームとしてそれぞれの問題を改善しようという努力ができていないのだったらそれは大問題です。番記者やチーム関係者(時にファンも含む)はこういうところをしっかり指摘していかなければチームとして負け犬根性が染み付いてしまいます。

 問題の一つとして挙げられるのは、チームとしての精神的支柱を欠いていることでしょう。頼みの綱のLindorもこの不調 (AVG .189, OPS .542) で、なかなか厳しい状況です。また、得点圏でここまで抑えられるということは各選手の弱点が把握されている可能性も示唆されます。

 一方、これほどチームの体質として問題がはっきりしているのですから、チームの雰囲気が変わってくると一気に勝てるようになるかという期待はあります。トレードなどで新しい風を入れることも検討してもいいでしょう。

 ドMの皆さんにとっては素晴らしい体験を提供する野球チームであるMets。今後の戦いを生暖かく見守っていきましょう。



【NYM】進撃のゾンビ・メッツ 2021/05/28

 ご無沙汰しております。前回のNoteを書いた時期と比べてみると、Metsのベンチには随分と違った顔ぶれが並んでいます(ヘッダー画像はこのツイートから)。26人中13人(野手に至っては13人中9人)がこれまで故障で離脱というまさに野戦病院状態です(一部直近数試合で復帰した選手もあり)。しかし、この瀕死の状態でも貯金を維持し、まさにリビングデッドのごとくナ・リーグ東地区の首位に君臨しています。↓はナ東の順位表(2021/05/28時点)。

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 一試合あたりの平均得点が3.4を下回るチームの好調を支えるのは投手力と守備力です。

投手陣―常に不完全であることを運命づけられた―

 抜群の制球と猫のような瞬発力を生かした守備力で決して試合を壊さないMarcus Stromanや、今シーズンはセーブがつく場面で一度も失点していない鉄壁の守護神Edwin Diaz、そしてなんと言ってもお忍びのリハビリ登板でSingle-Aの選手を震え上がらせたJacob deGrom防御率は依然0点台)といった投手陣の働きは各選手の成績を一瞥すれば明らかでしょう。これに週末の復帰が予期されるTaijuan Walkerや、故障中のCarlos CarrascoNoah Syndergaardが加われば最強のHard-throwing teamの完成だ!と期待が高まるとことですが、そう思ったようには行かないことは数年でもMetsを応援していれば明らかなことです。5月中旬に予定されていたCarrascoの復帰は少なくとも一月程度は遅れる見込みであるし、Syndergaardも6週間の投球停止が決まり復帰は早くとも8月になるとのこと。月末にはSeth Lugoの復帰が報道されていますが、なんとか無事に事が進んでほしいものです…

絶え間なく続くInjury reportsに対するあるファンのツイートがこちら↓。

 思い返すのは2015年、Metsが最後にワールドシリーズに出場した年。この年もJacob deGromMatt Harveyを始め脇を固めるBartolo Colon(最近メキシカンリーグで生存確認)にJohn Nieseと好調の投手陣の影で期待の若手Zack Wheelerを欠き、守護神候補Bobby Parnellは結局復帰せず、Blake Snellと並んで左腕トッププロスペクトであったSteven Matzは投げるたびにどこかしらの痛みを訴えるという故障離脱に溢れたシーズンでした(MatzはBlue Jaysで楽しくやっているらしく嬉しい。突然人が変わったように初回に打ち込まれる試合が続きベンチでストレス発散する姿も相変わらず)。続く2016年もWheelerは全休、そして離脱したdeGrom、これまた投げるたびに離脱するMatz、大幅に球速が低下したHarveyに変わってワイルドカードを争うチームを支えたのはSeth LugoRobert Gsellmanといった好調のルーキーたちだったのです。今後もMets投手陣全員が万全の状態で揃うことは期待しないほうがいいでしょう。世の中にはそのように生まれたチームも存在するのですよ。

野手陣ー抑え、抑えられる男たちー

 データを駆使した守備については過去の記事で再三触れてきましたが、ある程度の試合数を消化し、暫定の評価を行えるようになってきました。2021年のMetsは、極端なシフトを敷く割合がDodgersに僅差の2位である55.5%(2020年は21.4%)となっています。このシフト戦略はこれまで功を奏しており、シフトを行うことによって防いだ点数は11点と見込まれています(DRS基準)。好守のJeff McNeilLuis Guillormeのみならず、今年はPete Alonsoも守備でプラスを生んでいます(彼らは全員ゾンビランドサーガの一編を担う選手である。6月に復帰予定)。

 最大の貢献はFrancisco Lindorでしょう。彼にとってセンターへ抜ける当たりを放った相手打者に天を仰がせることは日課であり、日替わりの二・三塁手を鼓舞している姿はまさに内野陣の柱です。Jose Perazaもプラスの守備防御点を叩き出しています(彼らは貴重な健康ランドの人材。皆さんは奈良健康ランドを知っていますか?)。昨年までの課題であった捕手はJames McCannTomas Nidoともにプラスの守備指標(捕手は唯一の故障離脱がないポジションであり、近頃Metsは二人の捕手を同時に試合に出すことでゲームの緊張感を高める方法を思いついた:故障のAlonsoの替わりに一塁手McCann)。

 そして今年素晴らしいのは意外にも実はDom Smithであり、彼はDRSにして+3というMets外野陣の中で最高の数値を叩き出しています(彼もまた、故障からの復帰が待たれる一人)。彗星のように現れ、故障者リストに吸い込まれていった13年ドラフト11巡目の苦労人スピードスターJohneshwy Fargasもまた俊足を生かした素晴らしいディフェンダー。さらに、守備での課題を指摘されていたBrandon NimmoはDRSで+1(レフト)、スピードの衰えを指摘されていたKevin PillarもセンターでUZR+0.9、Albert Almoraも+0.4と皆が守備で正の貢献をしているのです(注:この一文に登場する3選手はすべて故障中である)。全員故障しているではないか? いえいえ、大丈夫です。トレードで緊急加入したBilly McKinneyは今年はフライボールへの嗅覚が冴えてすでにDRS+3。守備陣はこれからも変わらず(選手名は日替わりだが)投手陣を支える働きをしてくれるでしょう。

 困ったのは自軍の投手陣だけではなく、敵軍の投手陣をも支えてしまうこと。上述の通り試合当たり3.4点も入れておらず、今週のRockiesの先発投手はMetsが相手と知ってさぞ嬉しかったでしょう(しかし、旧友Harveyは無慈悲にも打ち砕いた)。

まとめ

 皮肉を散りばめつつも上機嫌で作文ができるのは何はともあれ五分五分以上には勝っているからです。BravesやPhilliesあたりが足踏みしている間になんとかゾンビパワーで(あとはおそらく半数は予期した日程通りに復帰する野手陣による攻撃力アップで)頭一つ抜けてもらいたいものです。



【Mets】June flight 2021/06/19

 "ベースボールの詩人"ことRoger Angell氏はかつて、「ベースボールが真に開幕するのは6月だ」と書きました。いうにそれは、毎日野球を見るわけではない普通の人が「今年の〇〇は強いらしいねぇ」と世間話をし始める時期だと。確かに6月に入ると順位が乱高下することも少なくなるし、そうでもないならば、「今年は接戦だぞ」ということです。さらに熱心な野球ファンについて言うなら、それは敗戦への対処に現れるでしょう(上位チームのファンは1つ負けたくらいでは動じなくなり、下位チームのファンは1つ負けたくらいでは何も感じなくなっている)。

リーグ屈指の強豪と互角以上

 Metsにとって開幕から6月までの2ヶ月少々は、「今年の先発陣は頼りがいがあるエースが3人もいる」「固い守りと強固な中継ぎ陣で接戦を守り切る」という去年までとは全く違うチームカラーを印象づけるのに十分な期間でした。どうやら新しいデータ解析部門はよく機能しているし、いくらFrancisco Lindorがシフトに反対しても、大胆なポジショニングは勝利の可能性を高めているようです。そして何よりも、どうやら現在貯金9を得ている2021年のMetsはそこそこ強いらしい。スター軍団のPadresを相手にしても、4月にはNo-Noを投げた好投手J. Musgroveを二度打ち砕き、一度は手ひどくやられたB. Snellにはきっちり仕返し食らわしてビジター・ホームともに五分以上にやってのけたし、絶好調のCubsもスウィープする寸前まで追い詰めて見せました。

 特にCubs戦の2勝はどちらも印象深いものでした。1戦目はTaijuan Walkerが序盤の失点に動揺せず1ダースきっかりの三振を奪い、Pete Alonsoがしぶとく打点を稼いで、最後は今月に復帰してエンジンが乗ってきたSeth Lugoがイニング跨ぎで締めました。9回は得点圏にランナーを許すも、空いた一塁を見て勝負を急がず、同点のチャンスにカーブに狙いを定めていた「可愛くない」ルーキーS. Alcantaraを高めの速球で圧倒してめでたく勝利。このセーブではかつて怪我でほとんど試合に出なかった元Mets戦士Jake Marisnickの失態(というか腕をブン回したサードコーチャー)にも助けられたのであるが(動画内では、敵味方問わず考えの浅いミスに対して「激しく動揺」することで有名なKeith Hernandezがまさに"upset"する様子が見られる↓)。

 2戦目はJacob deGromが故障を訴えて降板しても、緊急昇格した入れ墨男Sean Reid-Foleyが1HRを許しつつもなんとか試合をつないで、エースが心配で試合どころではないファンの前で6人が順繰りに投げてリードを守りました。特に、このところ打ち込まれていたTrevor Mayが3三振で鬱憤を晴らしたのが好材料です。こういう「不測の」試合を落とさないのが今年の強さなのです。

 3戦目の敗戦はある意味今年のMetsを象徴するようなもので、Marcus Stromanが好投し、好守備が盛り立てるも、K. Hendricksに手も足も出ず。唯一目につくのは、攻守ですっかり欠かせない選手になったBilly McKinney(今回のカバー画像)で、こういう試合でも一本打って好調をアピールしています。このような典型的な敗戦は補強ポイントの明確化に繋がるのではないでしょうか。ともあれdeGromが何より心配です。MRIで異常は見つからなかったとのことですが、あれだけの投球を続ければ体に負担がかかるのは仕方ないのかもしれません。ポストシーズンを視野に入れて、焦らず調整してほしいというのが正直なところです。

「6月」が意味するもの

 どのチームも現時点でだいたい70試合を消化しています。これくらいの試合数が「今年の我が軍はこういうチームなのだ」と、ファンが理解するのに必要なのでしょう。これは前に紹介した、MLBにおいて運に起因する勝敗のばらつきははだいたい70数試合分の勝敗のばらつきに相当する」という数学的な理屈と符合するという点で興味深いと思います。だいたいこの時期になれば、どのファンも開幕前に有識者がこぞって行う戦力分析がいかにあてにならないか(現在まで長打率リーグワースト3のMetsが屈指の打撃チームと評されていた)ということに気づき、先入観を排して目の前の試合を味わえる準備が済むでしょう。すると同時に、贔屓チームの新たなスターに対して「なかなかやるな」と顎を触りながらではなく真にリスペクトを払えるようになり、やっと目が冴えてきたファンをオールスターゲームが熱狂させ、トレードデッドライン、灼熱のポストシーズン争い、と怒涛のごとくシーズンが加速していくのです。

これからのMetsの戦い

 6月までのMetsは故障者を続出させながらも途中加入の選手が日替わりのヒーローを演じ、ゾンビ状態で5割付近を維持していました。そして一部が戻ったタイミングで一気に貯金を作り、現在に至るというわけです。故障離脱中の選手たちの多くは月末や来月の復帰が予定されていて、中でもJeff McNeilは今週末、Michael Confortoも一週間程度での昇格が期待されています。もちろん実績を考えれば彼らの加入は打撃力を向上させると強く期待できます。ただし両者とも離脱前はいまいち調子が上がっておらず、本調子に戻るまでにしばらく時間がかかるかもしれません。その間、"Bench Mob"たちが作ってきた勢いを失わないように互いをカバーし合えるかが肝心です(画像はgothambaseball.comより; 左からVillar, Pillar, Nido, Guillorme, Almora)。

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 また、万全の戦力であっても補強すべき点はどこかを見極め、トレードデッドラインで勝負を仕掛けることも必要になるでしょう。必然的にニュースを追う私たちも緊迫感が高まります。

 加速していくシーズンの最中でようやく、プレーを見るだけではない「ベースボールのファン」としての日々が始まります。



【NYM】 Metsに必要な補強 2021/07/23

 ご無沙汰しておりました。最近もMetsの試合は大量得点かつ僅差という馬鹿試合もといシーソーゲームが多いですね(最たるものが延長11回15-11で勝利した一昨日の試合)。やたらとハラハラする試合が多いのはなぜかとデータを見てみると、面白い傾向が見えました。

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 回の開始時点でリードしていた場合普通は終盤になるほど勝利が確実になるものですが、Metsの場合はその傾向が他のチームに比べて低いようです(リードを保って終盤に入っても負けやすい:上の図)。一方で下のグラフを見ると、他のチームに比べて終盤のビハインドからの逆転勝ちをしやすいということがわかります。Metsの試合を見ることが内蔵にストレスが大きく依存性が高いといわれることの理由がわかりますね。エンタメ球団の鏡。

↑Metsが最近提供したエンタメの一つ

 さて、あれよあれよという間にオールスターゲームが終わり、トレード期限(米時刻で7月30日)が近づいてきました。7月のMetsは貯金5−7付近をうろうろしています。特にここ最近は、Jacob deGromの再度の故障離脱もあり、先発陣が粘りきれない試合が目立っていました(それでも、5月8日以降NL東地区の首位の座をキープしています)。そんな中でも、昨日のMarcus Stroman(ここ数試合は序盤に打ち込まれ、4連敗を喫していた)の完璧な投球は非常に価値あるものでした。彼の好投によって希望は見えたとはいえ、(シーズン序盤は強みであった)先発投手がMetsの不安要素であることは変わりません。deGromに代わってオールスターに出場したTaijuan Walkerの大炎上は一試合きりの悪夢だとしても、好投を続けているとはいえ経験の浅いルーキーTylor Megillが矢面に立たされ、Jerad EichhoffRobert StockらDFA組が谷間を埋めるという状況はポストシーズンを目指すチームにとって健康的ではありません(Carlos CarrascoNoah Syndergaardの復帰が囁かれつつありますが、そんなことには期待しないでおくのが健康のためです)

↑Tylor Megill (チェンジアップとファストボールのコンビネーションが武器)

 もちろんMetsは先発投手の補強に向け何らかの策を講じるでしょう。しかし他にも打線(試合当たり平均3.95点はMLB27位)や中継ぎ投手(守護神Edwin Diazは3連続でBlown Save)といった弱点も指摘されています。ちなみにGMを務めるZack Scott氏のインタビューを聞く限りでは打線よりも投手(ベンチの野手はよくやってくれている発言)、中継ぎよりも先発に興味があるのかなという印象ですが(Diazへの信頼は未だ厚い発言)、選手のモチベーションへの影響があるので本心を言っているとは限らないでしょう。いわゆるTrade rumorは方々で論じられていますが、本記事ではチーム得点・失点に関するデータ(主に出典はここ、上の表も)を用いて補強ポイントを論じてみたいと思います。

打線の補強:下位打線を無視するなかれ

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 最初にご覧頂きたいのはこちらのグラフです。イニングごとの平均得点をMetsと全球団の平均で比較しています。前述の通りMetsの得点力は高くはありませんが、イニングごとで見ると序盤(とくに2回)の得点力が全体と比べて低いようです。これは下位打線の攻撃力に弱点があることを示唆します。

 トレードの対象としてCubsのKris Bryantが盛んに論じられていますが、このようにしてみると、下位を打つ選手の補強も重要だと言えそうです(個人的には、Bryantの補強はJD. Davisら主軸&Top1プロスペクトのFrancisco Álvarezを出さないという条件付きでやってもいいかなという程度)。

投手の補強:寸前☓が課題か

 続いてMets自慢の投手陣について以下のデータをご覧ください。

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 勝率5割以上(2021年7月23日時点)のチームと比べたときの失点割合を見てみると、3回と7回で低く、5回、8回、9回で失点しやすいというパワプロだと寸前☓が付きそうな様子です。チーム防御率の割に安心して試合が見られないのは、このように印象が悪い失点が多いからなのでしょう(冒頭のグラフトのも符合しますね)。中継ぎの柱と言われていたはずのSeth LugoEdwin Diazがともに防御率4点台であるという事実がそれを物語っています(もしここに、Craig Kimbrelが加入すれば救世主となることは間違いないでしょう)。逆に7回は失点が少なく、Aaron Loup (ERA 1.45)やツイッター芸人Trevor Mayといった好調のリリーバーの頑張りが伺えます。

まとめ

 こう見てみると、攻撃陣よりも要所で粘りきれない投手陣の補強が優先なのではないか(「勝てた」試合の負けを減らす戦略)という気がしてきます。実際、AS明け以降では一試合当たり6.7点の得点があり、リハビリ期間にマイナーで絶好調だったDJ. Davisの復帰以降、Pete AlonsoMichael ConfortJeff Mcneilといった選手の復調の兆しが見られます。さらに故障したFrancisco Lindorに代わって入ったLuis GuillormeもOPS .780という好調なアプローチ(2020年以降でみると出塁率が.420を超えている)で下位打線を支えています。一方で8、9回を安心して任せられるリリーバーがいない状況は、勝ち方の可能性を減らしてしまうことから、改善が必要と考えられます。

 今年はNL東地区の他球団が軒並み足踏みをしていますから、ある程度の出費は覚悟の上で、ポイントを抑えたベストな補強をしてもらいたいものです。

おまけ

チームごとの逆転勝ち数

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チームごとのblown lead

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実はリードを吹き飛ばした回数は30球団最小。しかし印象の悪い被逆転がお多い…。

チームごとのWalk-off wins/losses

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 サヨナラ勝ちも負けも多いMetsはやはりエンタメ球団の鏡



【NYM】Oh shit 2021/08/30

 久々の更新になりました。あまりにも情けない敗戦が続き、TDL前は首位を維持していたチームが借金を作って地区3位まで転落。悲劇が一段落ついたらnoteをしたためようかと思っていましたが、息つく暇もなくここまで転落してしまいました。

 本日のTragedy-Headlineは、1)復帰へ向けて調整中のN. Syndergaardがコロナ感染、2)一部のMets戦士がファンに対するブーイングをしているという衝撃の告白の2点です。ちなみに、Syndergaardはちょうど誕生日だったらしい。

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最悪のチームケミストリー

 トレードデッドラインの救世主として颯爽と現れたJavier Baez同郷の盟友Francisco Lindorとの熱きコンビでMetsを優勝に導くか?と期待していたのは一月前。時折放つ豪快なホームランは魅力的であるものの、トレード以降.210でOPSは.709、驚愕の三振率.355と物足りない成績。しかしそれ以上にヤバなのは、彼がNew Yorkの手厳しいファンのブーイングに対してとった行動である。なんと彼が活躍した際、ファンに向けてブーイングをするというのだそして、彼がもたらしたチームケミストリーとはまさにこのファンに対するブーイングの輪である (本記事のヘッダー画像参照)。これには保守的な球団代表Sandy Aldersonも激怒。

地獄の13連戦

 現在のMetsは63勝67敗。なけなしの2連勝で借金を減らしてのこの数字です。LAD-SFというナ西の2大巨頭との13連戦での11敗が、Metsの2021シーズンに引導を渡すことになりました。

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 上の表を見ていただきたいのですが、11敗のうち1点差での敗戦が7回もあります。これはストレスが貯まります。

メンヘラ球団Mets

 以下に示すのは、8/1以降のMetsを象徴する成績です。[]つきの項目で降順ソートしています。

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 得点圏打率はダントツの30球団最下位 (ほかにもちらほらおもしろチームがある件については省略)。また、試合中のWin-probabilityの変化から推定した「重要な場面度」を表すLeverage-Indexが高い(つまりとくに重要な場面)での成績は悲惨そのもの (CLEも大概であるが)。とくに腹が立つのはその「重要な場面」がやたら多いことです (なんと30球団最多!)。つまり盛り上がる場面を再三作ってはそれをぶち壊し続けているというわけです。ちなみに、Low-leverage=すなわちたいして重要ではない場面では打率はMLB全体8位で.259、OPSも.736とそこそこ (当社比) 打っているのです。これはクソだ。

 冒頭に述べたとおりブーイング騒ぎが話題になっていますが、これだけストレスがたまる試合をしてたら、そら、そうなるよ。というか、チームの醜態と選手のメンヘラ具合には因果関係を見出すほうが自然なのかもしれないのだ。筆者は仏の心で試合を見ているのでもはや腹が立つことはありません。



【NYM】GM探しの旅 2021/11/11

問題を分割して個別に解決する (divide and conquer) は複雑な状況への対処の基本ですが、まさにこの点に苦労しているプロ野球チームが存在します。

短期的ビジョン、中長期的ビジョン、フロントの人事、選手の獲得/放出、等々は相互に絡み合った問題ですからいかに問題を切り分けて解決するかが肝心です。しかし、それが可能となるためにはチームを管理する責任者(General manager)を明確にするのが大前提です。

この大前提を達成するのに相当の苦労をしているのがNew York Metsです。今年だけで、猥褻画像を女性に送りつけたJared Porter飲酒運転で逮捕されたZack Scottという2人のGMが解雇されているのです。Scott氏が今月解雇され、GMの座が空席となっているMetsに関して様々な風刺的ツイートが投稿されています。

このような状況下でも、Metsは今年FAのNoah SyndergaardMicheal Confortoの両名にQualifying offerと呼ばれる拒否時の補償付きの残留オファーを提示しています(Confortoには拒否されました)。さらにKris Bryantとの交渉も行っているようです。これらの動きには賛否両論あるところですが、GM決定という観点から難しいのは、この動きを受け入れられる人間しかGM候補になりえないという点です。要はすでに漕ぎ出した船の船頭を任されるような状況になってしまうのです。行き先が自分の目標と相違なければよいですが、そうでなければ受け入れることはないでしょう。

更に難しいのは、Metsのオーナーの特殊性です。MLB全球団でも最強の資金力を持つオーナーSteve Cohenは、Twitterでもファンと交流し表向きの発言を行っていることから、チーム編成に対しても大きな発言力を行使する可能性が否定できません。ゆえに自らにどれだけの裁量が与えられるのかという点で候補者が不安になってしまう可能性があります。これは、実効性は低いが投資家受けするプレゼンで大量の資金調達をしてしまったITベンチャーが雇われ社長を探している状況に似ています。他に活躍の場を見つける機会と自信があれば、敬遠してしまうのではないでしょうか。

以上のように惨状を嘆いていたところで、新たなMets GMとして最有力候補が挙がっているようです。Adam Cromie氏(元Nationalsのassistant GM)です。彼は弁護士になるために2017年を最後にチームを去ったことで知られています。2019年にWorld Seriesを制覇したNationalsのチーム再建を支えた人物として、実力は確かでしょう。ただし、現場を離れていたために、彼が就任した場合には球団社長のSandy Alderson (GMオファーを蹴った人物の一人、"Money ball"で知られるBilly Beane氏の師匠としても知られる)が編成に関わるのではないかとも言われています。

New York Messと言われたMetsをコントロールする(そのためには暴れん坊の選手たち球団社長やオーナーからの圧力と戦う必要がある)ために必要な資質は相当のものです。しかし、近年最高のMets GMとなるハードルは随分と下がっています。次のGMには、(就任中に犯罪を起こさず任期を全うすること、そして)チームに具体的な中長期的ビジョンをもたらすことを期待したいと思います。

# ヘッダー画像はこちらから



【NYM】監督が決まる★祝 2021/12/21

現役最強投手の一人であるMax Scherzer がMetsの一員となって3週間が経過しようとしています。他にも、ロックアウト(選手会とMLB機構の関わりが絶たれる、すなわち新規のメジャー契約が起きない)前に手堅い補強を行い、来季に期待が持てるチーム編成が進んでいます。

新監督、爆誕

そして、大きなニュースは念願の新監督が決定したことです。3年契約で監督に就任したBuck Showalterは3度のリーグ最優秀監督に輝いたことのある人物です。データを重視した綿密な野球で知られており、Metsの今後の方向性とも合致したということでしょう。Core 4 (M. Rivera, D. Jeter, A Pettitte, J. Posada)を擁するYankeesや、超重量打線のOriolesで、充実した戦力を生かした戦いの経験が豊富です。Metsは世界一の成金ことSteve Cohenの無限の財力でこれからも戦力を拡充していくと思いますから、その点でも適任と言えましょう。ただし、ある年の投票では15%の選手に「最悪の監督」に選ばれるなど選手に嫌われることもあるようです。活躍と引き換えにファンにブーイングをするという驚愕のパフォーマンスをした前科もある荒くれ者揃いのMets(関わった大半のメンバーはチームを離れましたが)では、この監督の過去は不安要素です。とはいえ、FAで加えたScherzerを含む4名は落ち着いたベテラン揃いであるため、一部の選手の暴走へのブレーキの役割を果たしてくれるはずです。

Starling Marte; Mark Canha; Eduardo Escobar

我がMetsが今オフに補強した主たる4人のうち、Scherzer以外は野手です。30過ぎの最も成熟した時期の選手であり、近年は安定した結果を残しています。昨年47盗塁とまだまだアスリートとしての寿命を感じさせるS. Marteは4年、M. CanhaE. Escobarの2人は2年契約+3年めオプションと世代交代も見据えた賢い補強です。こう言いつつ、誰か一人(ひどい場合は全員)が故障で長期離脱したり、早々に劣化してベンチ要員になってしまうことが多いのがMetsあるあるなのですが、夢を見られるうちは見ておきましょう。

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余談

ところで、筆者のNoteの特徴として、ネガティブなNoteとポジティブなNoteがだいたい交互に投稿されるというものがあります(少なくとも一方が3連続はしない)。↓例

https://note.com/embed/notes/n84e9b97e89ec

https://note.com/embed/notes/n048b5b5ef7ad

https://note.com/embed/notes/n1c55d03ee400

https://note.com/embed/notes/nfa13deda0198

これは別に意識しているわけではなく、良いこと悪いことはどちらもそれだけが続くことはないということでしょう。ポジ/ネガが極大に達したときに執筆をしているということです。

前回の記事がMetsの体質にぐちぐち文句を言った内容だったので、今回はわりとポジティブな内容なのでしょう。

https://note.com/embed/notes/nffa13cd81bd9




【NYM】2021Metsを打ち砕いた一打 2022/02/10

1位にいた期間が長いチームが優勝というルールであれば,2021シーズンのNL東地区の覇者はMetsでした.首位に立っていた期間はシーズン日程の過半数である103日.しかし.8月を境に転落が始まります.

2021年Metsの大失速

Fangraphsサイトより,Metsのplayoff oddsの推移を見ることができます.筆者の知る限り,これと最もよく似た図は中和滴定曲線のグラフです.この中和点に当たる部分,すなわち傾きが最も急な部分がMetsの希望が打ち砕かれたまさにその瞬間を表しています.

August 3, LoanDepot Park

それは8月3日でした.Redsに負け越した後,当時の同地区最下位であったMarlinsとの連戦を迎えます.初戦に完敗し絶対に負けられない第2戦,Metsの先発はTaijuan Walker前半戦を防御率2.66で折り返しAll-Star Gameにも登板しましたが,後半戦は負けが続き防御率も4に迫っていました.勝敗に最も影響したシーンは3回,2回に1点先攻を許し,追加点は防ぎたいMetsでしたが,1アウトから伏兵Isan Diazに右中間にホームランを浴び2点目を奪われます.その後制球が定まらず2アウト満塁のピンチを招き,迎える打者は期待のルーキーBryan De La Cruz.これまで打率は2割前半でOPSは5台と苦しんでいました.De La Cruzに対し,1ボール2ストライクと追い込んだWalkerは低めに変化球を投じます.ボールゾーンを狙った球が僅かに浮き,ストライクゾーンに留まります.伸びたバットの下面に当たったボールが1−2塁間を破りました.その時,希望は砕かれた(動画3分32秒)

https://youtu.be/R1zO-3SbT1Q?t=212

この一打で0-4と大差をつけられたMetsは,その後追い上げを見せるも届かず5-4で敗戦します.

The first day of last days

この試合の敗戦により,Metsのplayoff進出率は60.3%から50.9%に下落.結局,8月のMetsは9つの負け越しを作り一気に優勝争いから後退してしまいます.この次の週から始まったMLB2大強豪であるGiants-Dodgersとの連戦にほぼ全敗したことが直接的な失速要因ですが,このルーキーの一打が2021 New York Metsの終わりの始まりを呼んだといってもよいでしょう.

MLB公式サイトより2021年8月のMets戦績

結局De La Cruzはシーズン終盤を好調で終え3割近い打率を残し,打たれたWalkerは後半戦は防御率7.13,0勝8敗に終わりました.

首位陥落は偶然の産物ではありません。
何らかの連鎖的な出来事の結果です。
大惨事はなぜ起きてしまったのか。
その答えは、この、衝撃の瞬間に隠されています。

ヘッダーはMetsファンサイトより.
Morning newsならぬMourning news(訃報)と卑屈さ全開.Photo by Mark Brown/Getty Images